葉を落とした樹木の美しさに見愡れながら、いつもの街を歩く。

商店の立ち並んだ繁華な大通りを過ぎれば、ほどなく閑静な住宅街に出る。

小さな庭は、何処も植木職人の手がはいって間もないらしく、松の樹脂の濃厚な香りが空気中に漂っている。

生け垣の向こうでは、冷たい風にちりちりと震えながら、紅葉が樹間に浮かんで見える。

それはすでに盛りを過ぎていたが、冬の眩い陽光を浴びて束の間息を延ぶ。

冬の撮影には、太陽はたとえ街歩きとはいうものの頼もしい道連れとなる。

あてもなく歩いている私の背中には、冬の太陽の温かみが感じられる。
それは、絶え間なく心を急かす何かとは対極にある力のようだ。

独り歩きながら目を止めるものには、惜しみなく冬の光が集中している。

少し前、秋も深まる頃には夕暮れは背後からそこはかとなく忍び寄り、その気配はただわけもなく弱気を誘うのが常だった。

けれど季節は今は冬だ。
東京の街のここかしこを取り囲むようにして、シルエットの際立つ冬の木立が枝を揺らす。
シダレヤナギの枝先には、小さな葉が氷の雫のように下がっている。

自らの記憶とは無縁の新しく造られた街中で、私は心底安らぐのだ。

新しい街は、人は一切のノスタルジアと無縁でいてもかまわないと告げている。

ファインダーの向こうに見える世界は、人々が見つめる世界と同じであって同じでない。

しかし、それは確実に明日へと繋がる時空であってほしいと思う。

そのような願いを込めながら、切り取られた風景は、私が過ごした時間とは別の記憶へと生まれ変わりながら、光の中へと還っていくのだろう。

川村法子



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