「写真の精神」

 3月中に、いくつかの写真展に出かけた。3月というのは、冬とも春とも割り切れない(ここ日本の東京では)不思議な季節である。そのようなわけで、あるときは分厚いコ−トを着て出かけたし、あるときには薄手のセ−タ−だけで出向くこともあったが、いつでもどこでも会場は暑すぎた。そして、どの会場でも、非常にメカニズムに関連する質問が作者に寄せられていた。

 わたしは、自分の愛用しているカメラ以外はよく解らないし、まずカメラを見て興味を惹かれるのはそのデザインである。そうしたこともあって、わたしが写真展に行く目的は作者との語らいにある。とはいうものの、作者自身と語らうのではなくて、会場に展示されている写真たちと語り合うのである。もちろん、ぶつぶつと語り合ったりすると問題も多いので、心のなかで静かにおこなうことにしている。ゆっくり、じっくり見ていたいと感じたときには、会場を何周も歩く。そして、わたしは不思議の国のアリスよろしく様々な夢を見て帰る。

 ちらちらと揺れながら灯る蝋燭の明かりのような何かを発見したときは、大変に勇気づけられもする。
 「見る者に解放感をあたえるための心の準備」−これは大切な写真の精神のひとつのように思う。


川村法子 1996.4.10
Copyright(C) Noriko KAWAMURA 1996


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